※内容は2026年9月27日時点の法令・国税庁の公表資料をもとにしています。

契約書を作るたびに印紙税額を調べ、収入印紙を買って貼り、消印をする。1件あたりは数百円〜数千円でも、件数が増えると年間ではまとまった金額と手間になります。

この記事では、電子契約で印紙税が不要になる根拠を国税庁の資料で確認したうえで、契約金額と件数ごとの削減額を早見表にしました。

紙の契約書だと、なぜ印紙税がかかるのか

印紙税は、法律で決められた「課税文書」を作成したときにかかる税です。請負契約書(第2号文書)、不動産売買などの契約書(第1号文書)、継続的な取引の基本契約書(第7号文書)、5万円以上の領収書(第17号文書)などが代表的です。

ポイントは「作成」の意味です。国税庁の印紙税法基本通達第44条では、作成とは「課税文書となるべき用紙等に課税事項を記載し、これを当該文書の目的に従って行使すること」とされ、相手に渡す目的の文書は交付した時に作成したことになると定めています。

つまり印紙税は「紙に書いて、相手に渡す」ことにかかる税です。契約書を2通作って1通ずつ持つ場合は2通とも課税され、実務では自分が保管する1通分をそれぞれ負担する形が多く見られます。

よく使う契約書の印紙税額

契約金額(記載金額) 請負契約書(第2号・本則) 建設工事の請負(軽減後)
1万円未満 非課税 非課税
1万円以上100万円以下 200円 200円
100万円超200万円以下 400円 200円
200万円超300万円以下 1,000円 500円
300万円超500万円以下 2,000円 1,000円
500万円超1,000万円以下 1万円 5,000円
1,000万円超5,000万円以下 2万円 1万円
契約金額の記載がないもの 200円 200円

建設工事の請負契約書と不動産の譲渡契約書には、2027年(令和9年)3月31日までに作成するものを対象に軽減税率があります。Web制作やシステム開発などの請負は「建設工事」ではないため、本則の税額です。

業務委託契約書は中身次第です。仕事の完成を約束するなら請負(第2号)、営業者どうしで継続的な取引の条件を決める基本契約なら1通4,000円の第7号(契約期間3か月以内で更新の定めがないものを除く)、ほかの課税文書にも当たらなければ印紙は不要です。

電子契約なら印紙は不要。国税庁の見解と根拠

電子契約の契約書は電磁的記録(電子データ)で、相手に交付する紙の現物がないため、印紙税はかかりません。国も公式にこの見解を示しています。

  • 国税庁の質疑応答事例:電子署名を付けた電磁的記録を電子メールで送った事例で、「電磁的記録は文書に含まれません」「印紙税は課税されません」と回答
  • 2005年の政府答弁書(参議院):「文書課税である印紙税においては、電磁的記録により作成されたものについて課税されない」
  • 福岡国税局の文書回答(2008年):注文請書をPDFにしてメールで送る場合は、現物を交付しない以上、課税文書の作成に当たらないとする照会に「差し支えない」と回答

電子契約サービスに限らず、PDFの契約書や領収書をメールで送る場合も同じです。

印刷して渡すと、その紙に印紙が必要

注意したいのは、電子で締結した後に紙に印刷して相手に手渡したり郵送したりすると、その紙が課税文書になることです。福岡国税局の照会でも、メール送信の後に現物を持参して交付すれば課税されると整理されています。

印紙が必要になる場合とならない場合
電子契約で締結・PDFをメールで送付なら印紙は不要。印刷して手渡し・郵送すると印紙が必要

電子契約で印紙代はいくら減る?年間の削減額を試算

請負契約書(第2号・本則)を、自社が保管する1通分の印紙を負担している前提で、「1通あたりの税額×年間の件数」で計算しました。

契約金額(1件) 印紙税額(1通) 年12件 年50件 年100件
100万円以下 200円 2,400円 1万円 2万円
100万円超200万円以下 400円 4,800円 2万円 4万円
200万円超300万円以下 1,000円 1万2,000円 5万円 10万円
300万円超500万円以下 2,000円 2万4,000円 10万円 20万円
500万円超1,000万円以下 1万円 12万円 50万円 100万円

このほか、取引先ごとに結ぶ基本契約書(第7号)が年10社分あれば4万円、PDFで出す領収書(第17号、5万円以上)も印紙が不要になります。

サービス料金と比べると、少額・少件数では元が取れないことも

一方、電子契約サービスは主なサービスの公式サイトを見ると、有料プランは月額1万円前後(税込)から、それに加えて送信1件ごとに100〜250円程度(税込)の送信料がかかるものが多く、月数件までの無料プランを用意しているサービスもあります(2026年9月時点・各社公式)。

年12万円前後の基本料と比べると、100万円以下の契約を年に数十件という規模では、印紙代の削減だけでは元が取れません。500万円を超える契約が月1件以上あって、ようやく印紙代と基本料が並ぶ計算です。実際には、郵送代や製本・返送待ちの時間まで含めて比べるのが現実的です。

年間の印紙代と電子契約の基本料の比較
契約金額が大きく件数が多いほど、印紙代の削減額は大きくなる

受け手の立場で見た電子契約:費用も印紙も不要だった

計算デスクを運営する私たちの会社は、電子契約サービスを契約していません。それでも、取引先がクラウドサインなどの電子契約サービスを使っていて、受け手として電子契約で契約を結ぶことはしばしばあります。

受け手側は無料で署名でき、印紙も不要でした。紙の契約書なら、届いた2通に押印し、自社の控えに印紙を貼って消印し、1通を返送するという流れになりますが、その作業がありません。

電子契約の費用は送る側(サービスを契約する側)が負担するのが基本です。自社から契約書を送る機会が少ないなら、無理に契約しなくても、取引先の電子契約に応じるだけで印紙代は減らせます。

電子契約に切り替える前に確認したい注意点

  • 相手の同意が必要:紙を希望する取引先の分は、引き続き印紙が必要です
  • 紙の「控え」を相手に送らない:印刷して交付すると課税されるため、社内ルールで紙の送付をやめます
  • 電子帳簿保存法に沿って保存する:電子取引のデータとして、検索できる状態で電子のまま保存します
  • 法令で書面が求められる契約がないか確認する:契約の種類によっては書面や公正証書が必要です

なお、社内の控えとして印刷するだけなら交付がないため「作成」に当たらないと読めますが、直接示した国税庁の資料は見当たりませんでした。迷う場合は所轄の税務署に確認してください。

電子契約に切り替える前のチェックリスト
切り替え前に確認したい4項目:取引先の対応/紙の控えを送らない/電子帳簿保存法に沿った保存/書面が必要な契約でないか

自社の契約書の印紙税額は、計算ツールで確認

切り替えの判断は、今の契約書1通ごとの印紙税額を知ることから始まります。計算デスクの印紙税計算ツールなら、契約書の種類と金額を入れるだけで税額が分かり、消費税の区分記載や軽減税率にも対応しています。

参考にした公的な情報